アメリカ連邦政府のビザ発行手数料値上げはむしろ朗報かも

2024-02-14 2024-02-27

Ent-US

U.S.ビザ

アーティストやバンドがアメリカで活動するためのビザの連邦政府の発行手数料が値上げされます。最大3年滞在が許されるアーティスト・ビザ「O」が$460から$1,055へ、バンドのツアーなどの短期のビザ「P」が$460から$1,015へ、それぞれ値上げされます。この値上げは2024年4月1日からです。
https://www.uscis.gov/forms/filing-fees/frequently-asked-questions-on-the-uscis-fee-rule

また、ビザの取得手数料を誰が支払うかに関しては、これまで明記されていなかったのですが、今回アーティストやバンドを入国させるために「I-129フォーム」を提出する雇用主（会場やプロモーターなどの招へい元）の負担となる手数料が追加されることも新たに明らかにしています。ライブ・ハウスなどの従業員数25人以下の小規模雇用主の場合手数料は$300、AEGやLiveNationのような大規模雇用主の場合は$600です。

「$460から$1,055へ倍以上の値上げ」と聞くと「これでアメリカからの招へいが減ってしまうのでは」と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。
そもそもこれは政府の手数料だけで、ビザ取得の全体費用からすると小さなものです。ビザ取得には弁護士が必須です。この弁護士に支払う費用がバンド・メンバー5人とスタッフ3人の合計8人の申請なら、だいたい1万ドルかかるのです、内訳は

弁護士費用：おおむね$7,000程度
USCIS（アメリカ政府）の手数料：O-1（P-1）に$460、O-2（P-2）に$460の合計$920
ユニオンに支払う、レター発行の手数料：$1,000程度
郵送費用など、雑費：$500程度
この他に、領事館での面接手数料$190とビザ取得後のパスポートの郵送費用日本円で2,860円、は、面接申込みの際に領事館にクレジットカードで直接支払います。
弁護士費用は、申請者の人数が増えればその分加算されます。

この「$460」が「$1,055」なり「$1,015」に変わるだけなので、大勢には影響ありません。
また、費用負担が招へい元と明記されることに関しても、アメリカのビザは「アメリカの企業が自社の事業のためにこの外国人が必要である」という請願の形を取っているので、招へい元が負担することに関しても、実際の変化はありません。もしプロモーションなどの目的で「アーティストやバンド側が負担してでもアメリカに行きたい」という場合は、出演料から彼らの負担分を値引きしてあげればいいのです。
ですから、連邦政府の手数料が値上げになったからと言って、アメリカでの外国人アーティストの活動がやりづらくなるということはありません。むしろ、この値上げによって事務職員が増員されるため、これまで3か月から6か月近くかかっていたビザの取得のための待ち時間が短縮されることが期待されています。ビザの申請は招へい元の企業の住所を管轄するUSCIS（米国市民権・移民局）に行うことになっているので、招へい元の企業の多いカリフォルニア州やニューヨーク州は混み合っていて、期間がかかるケースが多いのです。そのため、当社では招へい元の数の少ない州にあるプロモーターに手数料を支払って「名義招へい元」になってもらうことをしたこともあります。
これまでは十分な余裕をもって申請しても公演にビザが間に合わずに断念するケースもあったり、追加料金「プレミアム」を支払って2週間で審査してもらえるようにするケースもありましたが、こういったことが減るはずだ、と思われます。
ですから、これからもビザの申請は同じように行っていきましょう。

手数料の値上げに関するUSCISのページは

https://www.uscis.gov/newsroom/alerts/uscis-announces-inflation-adjustment-to-premium-processing-fees

雑誌「Forbes」による解説記事は

https://www.forbes.com/sites/stuartanderson/2024/01/31/uscis-significantly-raises-h-1b-visa-and-immigration-fees/?sh=281c4c34dc6d

アメリカのアーティスト・ビザの取得に必要な手続きに関しては以下のページをご覧ください。このリストの各行をクリックすると、それぞれのページにリンクしています。