Spotifyのアルゴリズムを逆手に取った作戦があります
Spotifyにはさまざまなプレイリストがあります。アーティストごと、音楽ジャンルごと、年代ごと、生活シーンごと、などです。この中で人気が高いのが「睡眠」です。生活シーンごとのプレイリストには「Wokout」「Focus」等があるのですが「睡眠」の人気は根強いものがあります。
この中で急激に伸びているアカウントがあります。「Sleep Fruits Music」です。
この記事を書いている2021年9月18日現在、今月約95万人のリスナーに聴かれています。「Rolling Stone」の記事によると、聴取回数は1日あたり1000万回にも及ぶとのことです。
このアカウントは、雨の音だったり、雷の音だったりする自然音のなかに、アンビエント・ミュージックが時々はさまっているというアカウントです。
このアカウントはオランダのインディーズ・レーベル「Strange Fruit」が運営しているもので、この会社はワーナー・ミュージックの関連会社「Alternative Distribution Alliance (ADA)」がディストリビューションしています。
このレーベルはディープ・ハウスやEDMのレーベルで、特にアンビエント・ミュージックなどが専門のレーベルというわけではありません。
ウェブサイトで紹介されている音楽や、YouTubeの彼らのチャンネルで紹介されている音楽はいずれもダンス・ミュージックで、アンビエント・ミュージックなどは含まれていません。
でも彼らは「Spotifyのアルゴリズムを逆手に取ってお金を作る方法」を考えたのですね。
「Sleep Fruits Music」に含まれているトラックはいずれも
- 1トラック40秒前後
- しかも人気のあるジャンルです。
Spotifyでは30秒聞いた時点で課金されます。ですからお金は確実に入ってきます。
また、40秒だと最後まで聞かれる可能性が高いですよね。31秒でスキップしても最後まで全部聞いても、同じ再生回数1回、ですから、入ってくるお金は変わりませんが、Spotifyのアルゴリズムの評価はぐっと高くなります。Spotifyが楽曲をおすすめする際、同じ再生回数なら最後まで完奏された曲を優先するからです。最近のヒット曲のイントロが短いのは30秒以内にスキップされないため、曲の尺が短くてフェードアウト手法が取られないのは最後まで聞いてもらうための工夫です。
全トラックを40秒前後にして、人気のジャンルに投入する。アタマいいですよね。
音楽の仕事はお金がすべてなんかではないけれど、自分たちが自由に活動するためにはお金が必要です。
こういった方法だってあるんです。
これからは、メジャー・レーベルがこういう手法をマネしていくかもしれないですね。
ちなみに、2014年にはアメリカのバンドVulfpeckが公開した「Sleepify」というアルバム10トラックを削除しました。これはまったく無音の10曲入りのアルバムで、ファンは寝ている間にこの10曲をずっと再生して、バンドにお金が入るようにしたのですね。今回はこういうことにはならないと思います。
参考記事
A Sleep Music Label Is Somehow Out-Streaming Lady Gaga on Spotify
The label Strange Fruits is racking up huge play-counts on 30-second ambient rainfall tracks on Spotify. The music business is not happy.
Spotify asks Vulfpeck to take down silent 'Sleepify' album - Music Ally
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