CDを売るのはたちまち売上が上がるから手っ取り早いが、今の時代の方法とは言えない

世界的にABBAが話題になっています。

アメリカのBillboardが毎週行っているファン投票「What's Your Favorite New Music Release? (あなたの好きな新しい音楽は?)」で1位。ABBAは、レディ・ガガ、カニエ・ウェスト、ドレイクを押さえての1位です。

ABBA 2021年の姿

Billboard 人気投票の結果

https://www.billboard.com/articles/columns/pop/9625208/abba-i-still-have-faith-in-you-dont-shut-me-down-favorite-new-music-poll-results

イギリスでは、CDの事前予約の新記録を樹立しています。
https://www.officialcharts.com/chart-news/abba-break-universal-music-uk-record-for-biggest-ever-pre-order-with-new-album-voyage__33967/

音楽を聞くのにストリーミングじゃなくCDを利用したい中高年の人たちにアピールが成功すると、こういう結果が得られます。
フィジカルなCDやレコードのセールスは、その場ですぐに売上が上がるし、ヒット・チャートにもそのまま反映されるので、アーティストにとってはありがたいのです。
音楽の聞き方はCDからストリーミングにすっかり移ってきましたが、いまだにCDが欲しい層というのはいます。主に中高年の人たちですね。この人たちが一人になってじっくり音楽を聞くことができるのはクルマの中で、中高年が所有しているクルマにはCDプレイヤーが付いているのです。最近の新車にはCDプレイヤーが付いていません。日本でも、2017年に発売されたプリウスPHVにはCDプレイヤーが付属していませんし、2019年に発売されたカローラにはオプションでもCDプレイヤーは用意されていません。

CDが1枚売れると、たとえば3,000円の売上が立ちます。これにはCDの製造原価やCDショップの取り分、輸送費用が含まれているのですが、それでも売上高としては1万枚売れれば3000万円、10万枚売れれば3億円の売上が立つわけです。この売上は、買ってもらったCDが1万回聞かれようと、パッケージを開けずに1回も聞かずコレクションとして棚の中にしまわれようと、同じ金額です。
ストリーミングは1回聞いてもらってなんぼ、という売上の立て方で、Spotifyの場合は1回あたり0.2円くらいと言われていますから、3000円を売り上げようと思ったら15,000回聞いてもらわないといけない。これは、とても大変なことです。

Billboardのヒット・チャートでは、ストリーミング1,500回でアルバム1枚、という計算をしています。これは少しはストリーミングに有利ですが、それでも1500回とは大変な回数です。
BTSは、ファンに「ストリーミングよりもデジタル・ダウンロードを」と呼びかけています。フィジカルのいまだに強い日本だけ選んでユニバーサル・ミュージックと契約して、ベスト盤のフィジカルのプロモーションを徹底したりしています。これが経営、ですね。
ストリーミングで十分な売上を上げるのにはどうしても時間がかかってしまいます。CDを中心にプランが作られてきたレーベルでは、この「一発売上」のためにリリース日めがけたプロモーション・プランが立案されます。しかし、ストリーミングでは「一発売上」が立たないので、発表後長期間にわたる地道なプロモーションが必要です。
みなさんは、手っ取り早い一発売上を狙いますか? ストリーミング時代に合わせた地道な道を選びますか?

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