ロサンゼルスの山火事があっても音楽業界の中心地でいられるのか

A helicopter spraying fire retardant over the Hollywood Hills

https://www.nytimes.com/live/2025/01/08/us/california-wildfire-la-palisades

2025年1月6日にロサンゼルスの近郊5か所でほぼ同時に発生した山火事から10日が過ぎました。
ロサンゼルスの街は平静を取り戻し始めています。しかし、音楽業界の重要な部分が焼け落ちてしまいました。地元紙「LA Times」は、ロサンゼルスが音楽業界の中心地として維持していくのは難しいと論評しています。

LA Timesの記事

https://www.latimes.com/entertainment-arts/music/story/2025-01-15/fires-la-music-jake-viator-bob-clearmountain-poolside-musicares
5つの火災のうち、特に音楽業界に影響が大きいのは、いまも鎮火していない「パリセーズ・ファイアー」と「イートン・ファイアー」です。この他に、1月8日に出火した「サンセット・ファイアー」と言う火事もあり、これはハリウッド・ヒルズに発生したので、少し燃え広がるとハリウッドの中心街にも被害が及ぶところだったのですが、ロサンゼルスの消防当局がヘリコプターを使って上空から消火剤をまくなど、必死の作業で消し止めました。
「パリセーズ・ファイアー」はお金持ちの住むエリアを直撃したので、音楽業界でも古くからこの業界を支えてきた重鎮たちの家や財産や思い出が失われました。
「イートン・ファイアー」は、中心部の家賃が上がってホーム・スタジオなどを郊外に移した若い制作者の拠点を奪い去ってしまいました。また、ライブのクルー、たとえばツアーに使うバスやトラックのドライバー、ステージの電気などのエンジニアの家もなくなってしまいました。
「パリセーズ・ファイアー」では伝説のレコーディング・エンジニア/プロデューサー、ボブ・クリアマウンテンの自宅とホーム・スタジオが焼失してしまいました。ホーム・スタジオと言ってもSSLのコンソールやベーゼンドルファーのグランド・ピアノがある立派なものでした。彼は、他の場所で再建するための資源を持たない他のスタジオや宅録現場のことを心配しています。「基金を作るべきかもしれない。 私のためではなく、他のスタジオのためにね。」これはボブ・クリアマウンテンだけでなく、多くのパリセーズ・ファイアーの被災者から聞かれる声です。パリセーズ一帯の住宅平均価格は310万ドル(為替レート1ドル=157円で計算して約4億8700万円)とのことだったので、この地域の住人は皆さんお金持ちなのかと思ったら、30年前から40年前に40万ドルとかで購入した住宅が、この地域の価値向上に伴って何倍にもなったため、引退したビジネスマンなど、必ずしもお金のない人もいるみないなんです。しかも、カリフォルニア州は、2024年3月頃から、大手保険会社がカリフォルニア州の住宅火災保険の更新を行わないという通達を出したのです。

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この動きは、近年のハリケーンや山火事など自然災害の多発を受けたものです。CNNの報道によると、保険会社は2020年以降、カリフォルニア州内の住宅所有者向けの保険280万件の更新を拒否しています。この状況は、地球温暖化による気候変動が火災リスクを高めたという専門家の見解と関連しています。保険会社は、災害リスクが高い地域全体で住宅保険の提供を中止する傾向にあり、これはカリフォルニア州全体に影響を及ぼしています。こんな、お金はないのに火災保険でも焼失した自宅がカバーされない人でも、自分のためでなく他の人のために募金をお願いしています。カリフォルニア州にいるとそうしたメールやショート・メールが頻繁に届き、ビックリしてしまいます。日本なら、政府や自治体が何かをしてくれるのを期待してただ待つだけなのに、カリフォルニアの人たちは自分たちでなんとかしようという姿勢が本当に素晴らしいと思います。
同じことは若い世代の多い「イートン・ファイアー」でも同じような事が起こっています。
音楽業界全体でも、「グラミー賞」の授賞機関であるレコーディング・アカデミーの慈善団体「MUSICARES」を中心に音楽関係者への募金を組織的に行っており、緊急のニーズに対応するための1,500ドルの経済的支援と500ドル分の食料品カードの提供が含まれています。

Get Help with MusiCares | MusiCares.org

MusiCares helps grant short-term financial assistance for personal or addiction needs that have arisen due to unforeseen circumstances. Such as rent, car payme…

Resources For Musicians Affected By The Los Angeles Wildfires | GRAMMY.com

In response to the devastating Los Angeles wildfires, numerous organizations are mobilizing to provide resources and support for music professionals. From inst…

「LA Times」の論調は「アメリカのミュージシャンの平均年収が5万ドル以下であることを考えると、ロサンゼルスで手ごろな価格の住居を見つけるのはすでに難しい。 私たちは、家族を養い、安心してここに住み続けることがいかに難しいかを知っています。」という悲観的なものですが、自分たちで仲間も含めてなんとかしようという姿勢が伝わってくるので、この街はきっとこれからも音楽産業の中心地であり続けるだろうという気がします。

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