日本国外の演奏で使用する機材にカルネを取得する方法

ATAカルネ

2022年の秋、サンフランシスコの空港に楽器を持参して到着したら税関職員に「カルネは取得しているか」と聞かれました。これまでコマーシャルの撮影などで撮影機材を大掛かりに持ち込んだときには必ずカルネは取得していましたが、バンドの手持ち楽器ではしていませんでした。この時をきっかけに、カルネの取得をアーティストにおすすめするようになりました。

カルネとは?

カルネとは、一時輸出入する物品の通関に利用できる免税のための通関用書類です。カルネを利用して通関すれば、仕事で一時的に外国へ持ち出す物品の輸入税等(付加価値税含む)が免税になります。日本では一般社団法人日本商事仲裁協会が発給しています。ただし、カルネの発給日から1年の間に物品を持ち帰れる見込みがない場合には発給されません。
機材をEMS、DHL、FEDEX等の国際宅配便を送る場合は、これらの事業者がカルネ通関を行わない場合が多いため、事前に業者に確認が必要です。
カルネには約80ヵ国が加盟しているATAカルネと、台湾のみで利用できるSCCカルネの2種類があります。ここではATAカルネに関して説明します。

カルネを取得するには?

カルネを取得するには
①登録関連書類を用意する
②利用登録をする
③カルネを申請する
の3段階があり、使用後の
④カルネを返還する
も忘れてはなりません。

①登録関連書類を用意する

最初に登録関連書類を用意しておきます。
法人登録者:登記事項証明書、印鑑証明書、※決算報告書
個人登録者:住民票、印鑑証明書、※所得証明書
※印の「決算報告書」または「所得証明書」はカルネ発給料金[担保措置料審査]を希望の場合のみ提出するのですが、現金で納める担保はいずれ返金されるとはいえ、アメリカの場合日本での物品販売価格の20%、アイスランドやインドネシアなどは50%と高いので、担保措置料の審査は受けたほうが良いと思います。

②利用登録をする

カルネを利用するには、事前に書類による利用者の登録手続きが必要です。これは無料です。法人でも個人でも手続きが可能です。カルネ電子申請システムのURLは https://carnet.jcaa.or.jp/cs/user_regist です。
ここに必要事項を入力送信し、仮登録します。日本商事仲裁協会からの返信メールがあるので、ここに記載されているURLをクリックすると、登録申請書入力画面になります。必要事項を入力してください。入力後、登録申請書を印刷し、登録印(法人登録者:法人印鑑証明書の印、個人登録者:印鑑証明書の印)を押印してください。
登録申請書と登録関連書類を日本商事仲裁協会 東京本部へ郵送します。

〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-17 廣瀬ビル3階
一般社団法人日本商事仲裁協会 東京本部

※このページを読んで、急ぎのカルネ申請をした方からの情報です。

あまりにも時間がなく「申請が間に合わないかも」と思い、日本商事仲裁協会に問い合わせをしたところ「本当に急ぎなら、郵送ではなく持ち込みでも申請は可能」とのことです。これにより郵送にかかる日数が少しでも短縮できます。

③カルネを申請する

登録書類を日本商事仲裁協会が受理後、原則3営業日以内に通知書が登録者(法人登録の場合は[管理者])に簡易書留で発送されます。ここに記載されているIDとパスワードで「カルネ電子申請システム」を利用して発給申請内容を入力します。ここに訪問国などを記入していくのですが、面倒なのが「総合物品表」への記載です。

総合物品表

電子楽器やギター類などのようにシリアル・ナンバーがあるものは全てシリアル・ナンバーの記載が必要です。また、1個1個の重量も必要です。カルネには梱包材は含まれないので、ケースから出して本体の重量を計ってください。
日本商事仲裁協会では、楽器に関する記載のマニュアルを用意しているので、参考にしてください。
https://carnet.jcaa.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/11/%E6%A5%BD%E5%99%A8%E8%A8%98%E5%85%A5%E4%BE%8B.pdf
「カルネ電子申請システム」で必要事項を送信後、審査があり、審査後に発給予定日と発給料金が確定します。発給予定日までに発給料金を日本商事仲裁協会の銀行口座へ振込します。
発給手数料は基本料金14,000円で消費税は非課税です。この他に現金担保を支払います。
または審査を受けて担保措置料の支払いをします。

カルネ料金アメリカ100万円分の物品の例

この図のように、100万円分の機材を持ってアメリカに行って帰ってきた場合、現金担保だと総額214,000円を支払わねばならず、担保措置料だと総額18,500円と大きく支払額が異なるので、審査を受けて担保措置料の支払いにできたほうが良いですね。現金担保はカルネを変換したら原則3営業日以内に銀行振込にて返金されます。担保措置料は返金されません。

④カルネを返還する

日本に帰国後、カルネを返還します。カルネには日本の出国時、訪問先の国への到着時と出発時、そして日本への帰国時の4回スタンプやサインでいっぱいになっています。これをなくすと正常な手続きができないので、カルネの書類はパスポート同様、絶対になくさないように注意してくださいね。
日本商事仲裁協会で内容に不備がないか確認後、現金担保を収めている場合はこの金額が返金されます。

カルネの使い方

カルネは
①日本出国時
②訪問国到着時
③訪問国出発時
④日本帰国時
の4回使用します。

①日本出国時

空港に着いたら、最寄りの職員に「カルネの手続きが必要なので、税関の場所を教えて」と頼んでください。成田空港の場合、税関のオフィスの前には、呼び出し用のインターフォンがあるので、カルネ処理をしたい旨を伝えて、オフィスに入れてもらいます。

成田空港のカルネ手続きの看板

関西国際空港ではオフィスに行くのではなく、航空会社のカウンターのそばまで係員が来てくれてそこで手続きするのだそうです。総合物品表にある機材をチェックされることはほとんどありません。ただし、非常に高価な楽器はシリアル・ナンバーをチェックされることもあるとのことです。手続きが完了したら航空会社のカウンターでチェック・インして出国してください。

②訪問国到着時

税関にカルネと物品を確認してもらいます。アメリカの場合は入国審査を経てバゲージ・クレイムでチェック・インした荷物を受け取ったら外に出る直前に税関のカウンターがありますから、ここでカルネの手続きを依頼してください。持ち込む荷物とカルネを提出すればけっこうです。

③訪問国出発時

出発時にもカルネの手続きが必要です。日本の空港のときと同じように税関の場所を尋ねて、ここで手続きしてもらいます。

④日本帰国時

日本帰国時には、バゲージ・クレイムで荷物を受け取ったら税関にカルネを提出して手続きしてもらいます。

これまでは、カルネがなくても楽器等の機材の持ち込みが問題になることはありませんでした。最近は規則の遵守化が進んでいるようですので、日本国外で演奏活動をする際には、カルネの取得を考えてください。

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