Spotifyの支払いルール変更で、アーティストへの分配は少し増える
Spotifyは今月から年間再生数が1,000未満の曲には楽曲利用料を支払わない新ルールを開始しました。
日本語では「Musicman」で解説記事が公開されています。
https://www.musicman.co.jp/business/608727
英語の、Spotifyの支払いメソッド変更のお知らせページはここです。
https://artists.spotify.com/en/blog/modernizing-our-royalty-system
Spotifyのルール変更は
1. 人工ストリーミングを行っているレーベルとディストリビューターに制裁を行う
2. 年間1000再生以下の音源には楽曲利用料を支払わなくする
3. 「ノイズ・トラック」の基準を変更
の3つです。
「2」の「年間1000再生以下の音源には楽曲利用料を支払わなくする」というところに注目して「分配システムの改悪だ」と言っている人がいますが、これはそうではありません。まともに活動しているアーティストへの分配が増える「改良」なのです。
1. 人工ストリーミングを行っているレーベルとディストリビューターに制裁を行う
コンピューターを使って、人間が聞いてはいないのにストリーミング回数を稼ぐ技術があります。これを「Artificial Streaming」といいます。目に余る人工ストリーミングが発見された場合、レーベルとCD BabyやTuneCoreなどのディストリビューターに制裁を課すというものです。制裁金額は公表されていませんが、これによりディストリビューターも人工再生に関する監視をするようになるでしょう。
同じ曲やアルバムがリピートされて何回も何回もストリーミングされているのは、人間がこの曲やアルバムを気に入って自分で設定して聞いているのか、コンピューターがやっているのかを見極める技術が発達したので、Spotifyはこれを利用して人工ストリーミングの発見をするとのことです。
ネット広告には「1クリックいくらで広告料を課金」という形態の広告がありますが、ここでも人間ではなくコンピューターにクリックさせて実際には人間は見ていないのに広告料をせしめる悪徳媒体があり、これを防ぐシステムがすでにあるので、こうしたプログラムをストリーミングにも適用したものだと思います。
2. 年間1000再生以下の音源には楽曲利用料を支払わなくする
CD Baby や TuneCore などを使って自分の曲をSpotifyなどにアップロードするアーティストを「DIYアーティスト」といいますが、この中には高校の軽音サークルのバンドや大人の披露宴バンドのような、ほとんど再生されないアーティストが多く含まれています。これらの曲は削除こそされませんが、支払の対象から外れることになります。
年間1000再生で得られる収入は1,000円未満です。TuneCore Japanの場合、最低引出し金額は1,000円ですから、どちらにしても年間再生回数1,000回以下のアーティストはお金を受け取れません。ですから、これは影響を受ける人はいない、ということになります。
(https://www.tunecore.co.jp/member/balance)
3. 「ノイズ・トラック」の基準を変更
また同時に、楽曲とはいえない内容の音源をアップロードする「ノイズ・トラック」の基準を変更しました。Spotifyではホワイト ノイズや自然音、機械ノイズ、効果音などの「ノイズ・トラック」が人気です。眠れない夜などに風の音や小川のせせらぎなどをリピート再生すると良く眠れたりするのですね。Spotify では最短再生時間は30秒で、長い曲でも30秒を超えると「1再生」とカウントされるのですが、「ノイズ・トラック」に関してはこれを2分に変更しました。30秒の風の音をリピートして2分聞くと4再生とカウントされるところ、2分以上にすることでこれが1再生とカウントされることになるのです。
以上の3つの施策で、まともに活動しているアーティストに、これまで人工ストリーミング、年間再生1,000以下の楽曲、ノイズ・トラックに分配されていた収益が分配されるのですね。これは間違いなく「改良」です。気にしないでどんどん先に進みましょう。
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